『日独研究論集』刊行の経緯

 

日独フォーラムでは、2006年春に第15回目の開催(日独フォーラム 2006)を迎えるにあたって、ゲスト講演という従来のプログラムに加えて、参加者が自身の研究を発表する機会を新たに設けました。この個人発表は、原則として、日本人はドイツ語で、ドイツ人は日本語で行うこととしました(もちろん、研究分野によっては英語での発表でもOKとしました)。

日独フォーラム 2006では、初めての試みであったにもかかわらず、我々企画委員の予想を大幅に上回る12名(日本人8名、ドイツ人4名)もの参加者が、自身の研究について非常にレベルの高い発表を行ってくれました。加えて、各参加者は、研究分野が異なる個人発表に対しても有意義かつ建設的な質問を積極的に行っていました。このようなレベルの高い発表と質疑応答があったことから、我々企画委員は、これらの個人発表をフォーラム終了後に論文のかたちで提出してもらい、『日独研究論集』として刊行することとしました。こちらのページに『日独研究論集』の目次を掲載しております。

 

『日独研究論集』の編集方針

 

日独フォーラムの参加者は、ドイツ学術交流会(DAAD)の奨学金を得てドイツでの留学生活を開始する日本人若手研究者や、すでにドイツでの留学生活を終え帰国している日本人元DAAD奨学生、そして日本の大学・研究所で研鑽を積んでいるドイツ人留学生であり、彼らの研究分野の範囲は、人文社会科学系から、工学系、数物系、農学系、医学系に至るまで、極めて幅広いものとなっています。

 

そのため、必然的に、本論集には幅広い分野からの学術論文が採録されることになりますが、我々はこの点を、他の学術論集には見られないユニークで優れた点であると積極的に理解しています。これからの学術世界において、伝統的な「文系と理系」という単純な棲み分けの妥当性が問われざるを得ないという認識を、我々は共有しているからです。

 

たとえば、インターネットに代表される情報通信技術の革新(いわゆるIT革命)は、技術そのものを扱う工学系のテーマであると同時に、人々のコミュニケーションや生活様式、経済活動や国際関係にも影響を及ぼすがゆえに、社会学や哲学、政治学といった人文社会科学の扱うテーマでもあります。文系と理系の研究がクロスする対象というのは、ほかにも生命倫理や遺伝子作物、地球環境問題、都市計画、新型インフルエンザの感染問題など、枚挙に暇がありません。

 

もちろん、我々は、文系と理系がひとつになるべきであると言っているのではありません。そうではなく、文系理系を問わず研究者には、文理の各研究分野で蓄積されてきた知の構成法を理解し応用できるだけの柔軟な思考力が不可欠であると、我々は考えているのです。文系の研究者には厳密な意味での科学的方法論を理解することが求められ、理系の研究者には現実社会をその歴史的・文化的背景も含みながら理解し位置づけることが求められていると言えるのではないでしょうか。

 

このような共有認識に則り、本論集では、なるべく幅広い分野から多彩な論考を集めることが基本的な編集方針として採択されています。

 

謝辞

 

本論集の刊行は、多くの方々および機関の尽力によって実現されたものです。まず、本論集刊行に対して支援をして下さったDAAD本部に対して、御礼申し上げたいと思います。そして、歴代の日独フォーラム企画委員の皆様をはじめ、DAAD友の会元会長の石川明先生、現会長の樋口隆一先生、DAAD東京事務所元所長Dr. Ulrich Lins、現所長Dr. Irene Jansen、スタッフの米田成子氏、DAAD友の会事務局の関映子氏には、心からの感謝の言葉を贈りたいと思います。

 

本論集が、日独フォーラムおよび日独フォーラムの参加者、さらにはDAAD友の会のさらなる発展に貢献することを願ってやみません。

 

日独フォーラム編集委員